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2019年2月22日 (金)

動かずに働く

 地方に住んでいると,出張はつきものです。神戸大学の教員も,重要な仕事は東京であることが多いので,出張に頻繁に行っています。私も若い頃は,週に1回くらいのペースで行っていたこともありました。金曜日には授業を入れないようにして,そこを出張日に当てていたこともありました。逆に東京の先生に聞くと地方に出張に行くことはほとんどなく,出張に対する感覚がずいぶんと違っているのに驚いたことがありました(出張をどことなく楽しみにしているようでした)。

 しかし,私自身はここ23年,出張をできるだけしないようにしています。そのため,断る仕事も増えています。役所関係では,霞ヶ関にまでやってこいという感じで,Skypeなどはまかりならんという態度のところがまだあります。2年ほど前のことですが,総務省のある会合でも,Skypeはダメということがありました(悪いジョークとしか思えません)。私はずっと腰痛をかかえていて(肥満が主たる原因なのですが),昨秋から右膝も少し痛めていて,新幹線や飛行機の長時間の移動はできるだけ避けることにしていますが,それ以上に,自宅から東京への往復だけで半日くらいかかり,身体への負担が大きいことも問題です。翌日がとくに辛いです。その補償が十分にあれば少しは考えますが(新幹線や飛行機の席をアップグレードしたり,日帰りせずに宿泊したりするための原資となりますので),そういうことにはなりません。

 ということで,まったく出張しないわけではないものの(たとえば,どうしても行ってみたいというようなところからの好条件でのオファーが来たりした場合),できるだけ動かないようにしていて,遠方からの仕事の依頼は,自宅から会議に参加することを希望するようにしています。一昨日は,東京でat Will Workが開催したイベントに「登壇」しましたが,それはSkypeによるものでした。この主催者はSkypeでの参加の希望をいうと,あっさり受けてくれました。事前の打ち合わせもSkypeです。さらに関連する取材もSkypeです。これだと日程調整も簡単で,仕事の効率化も図れます。こういうのが当たり前のようになってほしいです。

 今後は,講演,会議,イベント参加など,それまで物理的に集まってやっていたものも,オンラインで集まるのが普通になると思います。現状では,こちらから,「Skypeでの参加でよいですか」(別にSkypeでなくても,Zoomなどでもいいのですが)と,どことなく無理を頼むような感じで打診することになるのですが,そうでなく,自宅から参加することがデフォルトで,依頼者のほうが,「現地に来ますか」と問うような時代が来てほしいです。

 職場にしても同じです。大学も将来的にはすべてテレワークにすべきだと思っています。授業はオンラインで可能なはずですし,学生も自宅から授業に参加すればいいのです(学生が授業に参加しなくなるのではという懸念に対しては,学業に意欲のある者を選別できてよいという反論をしたいです)。研究や教育のために施設が必要な場合は別として,たんに講義をすることだけでいえば,大学に教師や学生が集まる必要性はなくなっています。

 人々が地域に根ざした生活をし,仕事のためにわざわざ移動するということができるだけない社会をいかにして実現するかが,これからの課題です。そのためには,私も身をもってテレワークで,できるだけ「動かない」で働くことを実践できればと思っています。5G時代が到来するなか,決してこれは夢物語ではないと思います(私の場合,これが肥満につながり,それゆえ「動けなくなる」という悪循環に陥る情けない話になっているのですが,これはテレワークが悪いのではなく,私の運動不足が悪いだけです)。

 「動かない」のは,場所的な問題だけでなく,個々人の「時間主権」の実現にもつながります。移動時の疲労やロスを減らすことが,可処分時間を増やします。そこであいた時間を,趣味ややりたい仕事や地域活動や家庭サービスなどに充てるというのが理想なのです。私が近著『会社員が消える』で,テレワーク推進をしたのも,こうした社会になると展望しているからです。「働き方改革」という以上,それくらいまでやらなければ意味がありません。まずは役所自体が真の意味での働き方改革をすること,また役所の会合はすべてオンラインでやり,出張を前提としない体制にする(あるいは出張が不要な東京近郊の人だけでやらないようにする)ことから始めてほしいものです。

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