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2019年2月19日 (火)

西村あさひ法律事務所労働法グループの著作

 西村あさひ法律事務所労働法グループが,出版面でも,精力的に活動されています。先般は,森倫洋編集代表『モデル就業規則 和文・英文対照(第3版)』(中央経済社)をいただきました。日本で働く外国人が増えるなか,実務家にとっても,英語で説明する機会が増えているでしょうから,こうした本はたいへん参考になると思います。
 研究者の立場からすると,「労働契約」という言葉をどのように訳そうかというところで躓いてしまい,なかなか先に進まないのですが,実務的観点からは,そんなこだわりは無用で,きちんと伝わることのほうが重要です。
 ところで,この「労働契約」という言葉ですが,とても難しいです。この本では,employment agreementと訳されていますが,「Japanese Law Translation」のサイトでは,labor contractとなっていますね。労働契約法も,Labor Contracts Actです。そのほかにも,類似概念として,contract of employment,contract of laborもあります。さらに,contract of serviceだって,人によっては労働契約と訳すかもしれません。これに民法の雇用契約との違いなんてことを意識すると,泥沼にはまってしまいます。
 それはさておき,すでに研究者の書いた労働法の教科書の英語版は,Kanowitzによる菅野労働法の翻訳(Japanese Employment and Labor Law)と東大の荒木尚志さんの書き下ろしの力作”Labor and employment Law in Japan"が二大作品だと思います。これらも合わせ読んで,日本の労働法の国際化対応を進めていく必要がありますね。
 西村あさひ法律事務所労働法グループからは,もう一冊,菅野百合他編『働き方改革とこれからの時代の労働法』(商事法務)も,いただいておりました。こちらはタイトルどおりの内容で,第1編「長時間労働の是正」,第2編「日本的雇用システムの変化」,第3編「ワークライフバランスの実現」,第4編「ダイバーシティの実現」,第5編「これからの時代の労働法」という,非常に興味深い構成になっています。とくにシェアリング・エコノミー,テレワーク,病気治療と仕事の両立支援,外国人雇用,LGBT,AIといった旬のテーマが盛り込まれていて,目次をみるだけでも手に取りたくなるでしょう。
 こういう新しい分野は,実務家が先行して次々と法的分析をしていく時代になってきている感じがします。実務家が結集・分担して検討し,手際よくまとめて迅速に成果を発表していく時代なのでしょう。立法の時代が進んでいくと,こういう傾向はもっと強まるでしょう。研究者は,解釈論の領域なら優位を発揮できるかもしれませんが,解釈論の重要性が相対的に減ってくると,労働法の文献は実務家に席巻されるかもしれませんね。そういうなかでの研究者の存在意義は,深い考察に基づいた理論的貢献をすることになっていくのでしょう。 若手研究者には,陸続と現れる優秀な実務家に負けないように頑張ってもらいたいです。

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