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2019年2月 9日 (土)

八田達夫・NIRA編『地方創生のための構造改革』

 八田達夫・NIRA総合研究開発機構共編『地方創生のための構造改革-独自の優位性を生かす戦略を』(時事通信社)をいただきました。いつも,ありがとうございます。この本の英語バージョンも,ありがとうございました(“Economic Challenges Facing Japan's Regional Areas”, Palgrave Macmillan(https://www.palgrave.com/gp/book/9789811071096))。
 本書の内容は,八田先生が「はしがき」で,きれいにまとめておられます。成長戦略としての地方創生のための具体的政策を提示することがこの本の目的です。サブタイトルにあるように,地方には独自の優位性があるはずですが,それを発揮できていないのには制度的な要因があるとし,規制改革と行政改革により,この要因を取り除かなければならないとするのです。
 規制改革については,農業,漁業,観光の3分野が,とりあげられています。どれも,既得権益をもっている団体や個人が,これらの産業の可能性を奪ってしまい,地方のもつポテンシャルを生かすことができていない,という問題があるようです。本書では,こうすればよいという具体的な提案も提示されており,せひ政府も検討してもらいたいものです。
 行政改革については,高齢化対応策,少子化対策,地方財政制度が,とりあげられています。ここでも,地方の自治体が,これらの対策をとれないのには,制度的な要因があるということが示されています。とくに少子化対策については,そもそも課題の設定が間違っているという重要な指摘もされています。東京圏への一極集中を止めることが,日本の人口減少の歯止めになる,というのは,事実誤認に基づく誤った政策であるというのです。東京圏の大都市の出生率は地方のいくつかの大都市に比べてかなり高い水準にある,というエビデンスをつきつけています。そうだとすると,若者が地方に移住しても,少子化は改善しないことになります。むしろ少子化対策として必要なのは,地方財政の改革であり,国が,各自治体に子育て支援の「モデル給付額」を支給し,自治体が子育て支援の財源負担をしなくて済むようにすればよいと提言されています。
 解雇の金銭解決に関して一緒にお仕事をしたときにも感じましたが,八田先生が経済学の理論モデルを使い,現実の制度の問題点を明らかにし,そして具体的な解決策を提示して政府を動かしていこうとする熱意には並々ならぬものがあります。頭脳のシャープさにには,先生よりもはるかに若い私でもついていけないくらいです。八田先生の情熱が,地方創生をめぐる政策の改善につながっていけばと願ってやみません。

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